在留資格「興行」について、その種類や要件、申請方法について解説していきます。
演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動で日本に在留する場合、この在留資格「興行」を取得する必要があります。具体的には、俳優が日本で公演する、歌手が日本でライブをする、スポーツイベントで海外選手が出演するなどなど……。興行ビザと一口に言っても1号から4号に細分化されています。まずは、今回の訪日内容がどれに合致するのか検討しましょう。
興行ビザの種類
- 1号:飲食を提供することができる施設での興行
ライブハウス、キャバレーなどの施設で飲食の提供があって、コンサートやダンスを行う場合など - 2号イ:国や地方公共団体、特殊法人などが主催している場合、又は学校教育法に規定する学校においての興行
小中学校での公演、文化祭や学園祭、NHKやJRAが主催する公演など - 2号ロ:国、地方公共団体又は独立行政法人の資金援助を受けて設立された本邦の公私の機関が主催する興行
- 2号ハ:敷地面積10万平方メートル以上の施設において外国の情景又は文化を主題に観光客を招致するために行う興行
- 2号ニ:飲食物を有償で提供せず、客の接待をしない施設又は客席の定数が100席以上の施設での興行
コンサートホールや劇場、野外の施設などでの公演など - 2号ホ:一日につき50万円以上であり、15日を超えない期間の興行
ホテルでのディナーショーなど - 3号:興行のうち演劇などを除くもの
プロ野球選手やサッカー選手などのプロリーグに所属しているスポーツ選手など
相撲力士やプロレスラーなど
チェス大会に出場するチェス選手など - 4号:興行の形態で行われない芸能活動
商品や事業の宣伝に係る活動
番組・映画の出演・製作等に係る活動
商業用の写真撮影に係る活動
CD等への録音・録画を行う活動
どれに該当するかは、施設や主催者、興行活動の内容で判断されます。
該当しそうな項目はありましたか?
1号と2号の大きな違いは「飲食の提供の有無」になります。ちなみに2号ハの10万平方メートルは東京ドーム約2個分の大きさになります。この要件に合致する施設なんてそうそうありませんね。
興行ビザの要件 (興行1号)
外国人出演者の要件
- 外国の教育機関において当該活動に係る科目を2年以上の期間専攻したこと
- 2年以上の外国における経験を有すること
これら2つの要件のどちらかを満たしている必要があります。
一日につき500万円以上の報酬額がある場合はこれらの要件は求められません。
- 1年間の実務経験と1年間の学歴で出演者の要件を満たすことはできるの?
-
合算して2年ということはできないので、その場合は要件を満たしません。
外国人を招待する側の要件
(1) 外国人の興行に係る業務について通算して3年以上の経験を有する経営者又は管理者がいること。
(2) 5名以上の職員を常勤で雇用していること。
(3) 経営者又は常勤の職員が下記の行為や犯罪歴がないこと
① 人身取引に関与していないこと
② 過去5年間に不法就労助長罪に関与していないこと
③ 虚偽申請のための偽造文書の作成、交付等に関与
④ 集団密航に係る罪又は売春防止法により刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過
⑤ 暴力団員、暴力団員でなくなった日から5年経過
(4)過去3年間に締結した興行契約に基づいて興行の在留資格をもって在留する外国人に対して支払義務を負う報酬の全額を支払っていること
(1)から(4)までの項目はすべて満たしている必要があります。ただし、外国の民族料理店で月額20万円以上の報酬を受けて、その民族音楽に関する踊りや歌、演奏をする場合は(1)から(4)は求められません。無論、外国の民族料理店であって(1)から(4)が求められないからと言っても、適切な受入れがなされることは必須です。
(2)と(4)は特に審査されるので、要チェックです。
契約について
- 本邦の機関との契約が月額20万円以上の報酬を支払う義務を負うことが明示されていること
報酬が日割りで支払われる場合や公演期間1か月に満たない場合は、月額換算で20万円を超えていれば安心でしょう。
出演施設の要件
(1) 不特定かつ多数の客を対象として外国人の興行を行う施設であること。
(2) 風営法第二条第一項第一号に規定する営業を営む施設である場合は、次に掲げるいずれの要件にも適合していること。
① 専ら客の接待(風営法第二条第三項に規定する接待をいう。以下同じ。)に従事する従業員が5名以上いること。
② 興行に係る活動に従事する興行の在留資格をもって在留する者が客の接待に従事するおそれがないと認められること。
(3) 13平方メートル以上の舞台があること。
(4) 9平方メートル(出演者が5名を超える場合は、9平方メートルに5名を超える人数の1名につき1・6平方メートルを加えた面積)以上の出演者用の控室があること。
(5) 当該施設の従業員の数が5名以上であること。
(6) 当該施設を運営する機関の経営者又は当該施設に係る業務に従事する常勤の職員が次のいずれにも該当しないこと。
① 人身取引に関与していないこと
② 過去5年間に不法就労助長罪に関与していないこと
③ 虚偽申請のための偽造文書の作成、交付等に関与
④ 集団密航に係る罪又は売春防止法により刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過
⑤ 暴力団員、暴力団員でなくなった日から5年経過
(1)に関して、会員制などである場合は多数の客を対象としていないので、要件を満たしません。
(3)の条件に加えて、各自治体の風俗営業に関する条例が定められており、当然それに適合しなければなりません。例えば、東京都では高さ30平方センチメートル以上という規定もあるため、こちらも満たしている必要があります。
(5)の従業員は直接雇用されている必要があります。
細かい規定が多いのも興行ビザが複雑と言われる要因の一つになります。特にしっかりと要件を満たしているか確認していく必要があります。
ご依頼から申請までの流れ
興行ビザの要件に該当しているかを確認いたします。
申請に必要な書類をご案内します。
必要書類リストをもとに書類をご準備ください。
住居地を管轄する出入国在留管理局へ提出
追加書類が求められれば直ちに提出します。
在留資格認定証明書が発行されたら、在留資格認定証明書を外国人本人に送付します。
在留資格認定証明書が本人のもとに届いたら現地にある日本大使館又は領事館にて査証申請を行います。
査証とは、日本へ入国するためのものになります。
査証申請の際には、在留資格認定証明書を提出することになりますが、審査終了後在留資格認定証明書は返還されます。
入国時に必要となりますので、捨てないようにしましょう。
審査期間は1週間前後ですが、その国にある日本大使館ごとに異なってきますので、早めに手続きをしましょう。
査証、在留資格認定証明書、パスポートを持って入国してください。