外国人をコックとして正式に雇用するには、単に調理技術があるだけでは不十分で、出入国在留管理局から適切な在留資格を取得しなければなりません。では、外国人の料理人を日本で雇用するには、どのような在留資格が必要なのでしょうか?本記事では、雇用側が知っておくべき代表的な在留資格や、その取得条件、メリットとデメリット、注意点などについて行政書士がわかりやすく解説します。外国人材の採用を検討している飲食店オーナーや人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
外国人コックを雇う主な在留資格とは?
料理人として働くには、主に2つの在留資格があります。1つ目は外国の料理を日本で作るための在留資格「技能」、2つ目は外食産業の人手不足を解消するための在留資格「特定技能1号(外食業)」になります。どちらを取得すべきかは、お仕事内容や外国人の資格や実務経験によって異なります。
技能
外国人を料理人として雇用する場合、一般的に技能と呼ばれる在留資格を外国人に取得してもらいます。この在留資格は、「料理の調理又は食品の製造に係る技能で、外国で考案され、我が国において特殊なものを要する業務に従事する」ためと定められています。この在留資格で従事できるお仕事の内容は、①「料理の調理又は食品の製造」であり、それが②「外国で考案され、我が国において特殊なもの」でなければなりません。具体例としては、中華料理、タイ料理、ベトナム料理、ネパール料理などのエスニック料理を調理がお仕事の内容になります。
日本の居酒屋などで勤務する場合は、技能の在留資格ではなく、特定技能1号(外食業)を取得しなければなりません。料理をする=技能の在留資格に当てはまるわけではないので、注意しましょう。また、外国起源であったり、外国人が考案者である食べ物であっても、日本で高度に発展したものであるならば、外国料理でないと判断されます。(例:ちゃんぽん、皿うどんなど)
「技能」を取得するには、次の要件を満たさなければなりません。
例えば、中華料理の料理人として働く場合は、中華料理の料理人として10年間の実務経験が必要になります。この実務経験には、学校などの教育機関において調理を学んでいた期間も含みます。
この在留資格の最も難しい点は、実務経験の証明になります。しっかりと料理人としての実務経験が疎明できない場合、不許可になるリスクは高まります。国によって求められる書類は異なりますが、できる限り、公的な書類で在職期間を証明していく必要があります。
なお、タイ料理に関しては、タイ労働省が発行するタイ料理人としての証明書があれば、5年の実務経験に緩和されます。
- 中華料理店で5年、フレンチレストランで5年働いていました。技能は取得できますか?
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取得できません。この場合、実務経験は合算できません。
- 料理人の専門学校で3年、フレンチレストランで7年働いていました。技能は取得できますか?
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料理人の専門学校で学んでいたことがフランス料理であるならば、実務経験を満たします。
特定技能1号(外食業)
「特定技能1号(外食業)」は、日本の外食産業における人手不足を解消するために導入された在留資格です。この資格により、一定の技能と日本語能力を有する外国人が、日本国内の飲食店で働くことが可能になります。この在留資格できるお仕事の内容は、飲食物調理、接客、店舗管理になります。
「特定技能1号(外食業)」を取得するには、次の要件を満たさなければなりません。
日本語能力試験 JLPT(N4以上)は、日本語学校の学生であれば、当然に卒業時に到達しておくべき基準になります。難易度のイメージとしては、英検準2級から2級程度と同じレベル感になります。特定技能1号技能測定試験の学習用テキストは、日本語、英語、ベトナム語、クメール語、ミャンマー語、タイ語、インドネシア語、ネパール語で公開されています。そこまで難しい試験ではないので、事前にテキストを読んで勉強しておけば合格できます。
特定技能1号は技能と比較して当てはまる方が多いのが特徴です。また、試験に合格することで、要件をクリアできるため、おすすめの在留資格になります。ただし、特定技能にもデメリットがあります。
これらは外国人本人のデメリットになります。特に特定技能1号で日本に滞在できる期間は決まっているため、それまでに特定技能2号に移行すべく、特定技能2号技能測定試験に合格し、日本語能力試験 JLPT(N3以上)を取得しなければなりません。また、母国に配偶者や子どもがいる場合、特定技能2号になるまでは日本に呼んで一緒に住むことができません。(家族が短期滞在で日本を訪れることはできます)
雇用主にもデメリットはあります。特定技能1号で在留する外国人には、日本での生活などをサポートしていく体制を取らなければなりません。この支援業務を自社で行うか、登録支援機関と呼ばれる会社又は個人に委託しなければなりません。多くの企業は、登録支援機関に支援業務を委託しています。そして、登録支援料という形で費用が発生します。しかしながら、登録支援機関に外国人雇用にあたり、様々なサポートが受けることができるため、全くのデメリットではありません。
外国人の雇用において在留資格は必須ですが、在留資格は複雑でどれを取得したらいいかわからないという声を多く聞きます。雇用前には、在留資格に詳しい行政書士に一度相談されることをおすすめします。