老親扶養ビザとは
「老親扶養ビザ」は通称であり、正確な在留資格の名称は告示外の「特定活動」になります。「特定活動」は告示内と告示外があり、告示内はあらかじめその類型が定められたものになります。告示された「特定活動」には、アマチュアスポーツ選手、インターンシップなどがあります。このような告示内の「特定活動」の場合は出入国在留管理局のHPに必要書類と申請書が掲示されています。一方で告示外であるということは、具体的に必要書類が定められておらず、案内があるわけでもありません。出入国在留管理局に「老親扶養」について教えてほしいと尋ねてもそんな在留資格はありませんと回答されてしまいます。この記事では、便宜上「特定活動」と言わずに「老親扶養」と呼称します。
大前提として親を短期滞在以外で日本に呼ぶことは難しいよ。
なぜ老親扶養は難しいのか
前述の通り、「老親扶養」は定められた在留資格ではありません。そのため、こうすれば必ず取れるということはありません。また、前述の通り告示外であるということはどういう書類を提出すればいいのかということも明示されていません。そして、「老親扶養」は人道的な観点から特別に在留資格を付与されることになるため、日本に在留することについて相応の理由が必要となります。また、短期滞在の在留資格から他の在留資格へ変更することは、原則として認められておらず、やむを得ない特別な事情がなければ、他の在留資格へ変更することができません。
許可の可能性
老親扶養として在留が認められるケースは非常に少ないのが現状です。また、許可の基準が定められていないため、不許可事由を取り除いてから再申請を行うこともハードルが高いです。年老いた親を独りにできないという思いを相談者からよく聞きますが、老親扶養として特定活動の在留資格を取得することはできないと割り切り、別の方法を考えるのが適切な場合もあります。
老親扶養以外で両親を日本へ呼ぶには
特定活動(老親扶養)以外の在留資格でも日本に在留することが可能な場合があります。それぞれ要件があるので、老親扶養を申請する前にこちらの在留資格の申請も検討してみましょう。
在留資格「特定活動(高度専門職等の親)」
在留資格「高度専門職」で在留する外国人の7歳未満の子を養育するため、又は高度専門職外国人の妊娠中の配偶者若しくは妊娠中の当該高度専門職外国人に対し、介助、家事その他の必要な支援をするため、高度専門職外国人又はその配偶者の親(親には養親を含みます。)を日本に呼ぶことができます。
両親を日本に招聘するには下記の要件を満たす必要があります。
・高度専門職の在留資格で在留している者に7歳未満の子供がいること。
(子どもは養子を含みます。)
・高度専門職で在留する外国人と配偶者の年収が800万円以上であること。
在留資格が高度専門職で7歳未満の子どもがいるのであれば、両親が特定活動34号の在留資格をもって日本に在留できる可能性があります。ただし、この注意点としては、この在留資格では両方の両親を呼ぶことはできず、どちらか一方の両親しか日本に呼べません。また、子供が7歳を過ぎると在留期間を更新することができなくなり、両親は帰国しなければなりません。
在留資格「経営管理」
日本に在留するために「経営管理」の在留資格を取得しようとする方がいます。「経営管理」は、日本で会社などの経営やマネジメントに従事するための在留資格になります。一般的に就労ビザと言われる在留資格である「技術人文知識国際業務」と違って学歴や実務経験を要件として求められないため、「経営管理」の在留資格を目指すことも可能です。ただし、年齢が上がるつれて就労できる在留資格の難度は上がります。本当に日本で就労するのかと出入国在留管理局から強く疑われるからです。
特に「老親扶養」として在留資格を申請している場合で、「経営管理」を申請する場合は、前後の申請で主張していることが異なるため、就労するかどうかに疑義が生じ、「経営管理」の許可が下りるのは難しいでしょう。一方で両親の年齢が比較的若く、これまでに会社経営の経験や大学で経営学を学んでいたなどのバックグラウンドがあるのであれば、「経営管理」を取得できる可能性が上がります。
いずれにせよ、許可が下りるかという観点よりも日本で会社などを経営していきたいという思いがなければ、事業を継続することが難しいのが現実です。また、許可が下りたものの経営実態がない場合は、更新することができないこともあり得ます。会社を経営していく体力がない場合は、経営管理はおすすめできません。
在留資格「特定活動(医療滞在)」
日本で治療等を受けることを目的とした在留資格になります。滞在できる期間は、90日以内、6か月又は1年のいずれかの期間になります。医療コーディネーターや旅行会社などを通じて、医療機関と診察の日程や内容を調整します。ただし、特定活動(医療滞在)で在留する外国人は、国民健康保険に加入できません。医療費を負担できる経済力があり、病気を日本で治療したい場合は、この在留資格を検討してみることをお勧めします。
老親扶養ビザの要件
老親扶養は定められた在留資格ではないため要件は存在しません。ただし、これまでの許可事案から少なくとも下記の事項を満たしている必要があると考えられます。これらの事項を満たしている場合であっても、必ず許可がでるものでないことは理解した上で申請を行いましょう。
高齢であること
年齢に関しては70歳が一定の基準なります。これよりも年齢が下の場合は、許可の可能性はさらに低くなります。しかし、もともと人道的な観点から許可される可能性があるため、年齢が70歳以下だからといって全く希望がない訳ではありません。また、年齢が70歳以上だから許可される訳ではないので、あくまでも基準の一つになります。
日本に在留を認めてあげないと人道に反する場合は、許可される可能性があるんだ。
日本にいる子以外に扶養者がいないこと
本国に子どもが居住している場合は、老親扶養はほぼほぼ許可が下りません。例えば、その子自身に障碍があり、両親を世話することができないなどそのような事情がなければ、本国に子どもがいる状況での申請をしても許可は見込めないでしょう。
一定の収入があり、公的義務を果たしていること
老いた親を養うため一定の収入があることが求められます。また、納税の義務を履行していることも審査の際に見られるといわれています。
- 老親扶養は人道的に助けないとかわいそうな人に与えられることになるよ
- 本国に身寄りもなく、一人で生活することもできないといった特別の事情があるのであれば、申請をしてみてもいいかもしれないね。
- ただ、この在留資格は最も難しいと言っても過言ではないよ。
申請までの流れ
アンカー行政書士事務所では、無料相談を実施しております。当事務所にご依頼いただける場合は、あらかじめご相談いただければ幸いです。
本国で書類を準備ご相談時にお聞きした内容をもとに必要書類リストをお渡しします。本国で必要となる書類はこの時点で取得しておいてください。
査証申請日本に入国するために査証を申請します。「老親扶養」は告示外の在留資格になるため、一度日本に「短期滞在」で入国する必要があります。
入国日本に入国しましたら、在留資格を「短期滞在」から「老親扶養」に切り替える手続きを申請します。
日本国内の書類の準備書類の収集および申請書、理由書を作成します。
在留資格変更許可申請出入国在留管理局に申請書を提出して審査が終わるのを待ちます
審査結果が通知される審査には2,3か月を要します。許可が下りた場合は、在留カードを受け取ります。不許可だった場合は、出入国在留管理局に出向き不許可の理由を確認します。再申請が可能な場合は再申請を試みます